“いま”から見つめる、新しい“美の楽しみ”
清荒神清澄寺 鉄斎美術館 蔵
老いるほどに輝きを増し、80歳代になってからも奔放な筆さばきで数多くの作品を残し、89歳の長寿を全うした文人画家、富岡鉄斎。鉄斎のモットーは「万巻の書を読み、万里の路を行く」。若い頃から和漢の書籍を読み漁るとともに北海道から九州まで全国各地を旅した。今年は富岡鉄斎の没後100年。西洋画が流入し新たな潮流が巻き起こった明治大正時代、孤高を貫いた“最後の文人画家”、鉄斎の姿に紹介する。
現代美術の最前線を走り続ける村上隆が8年ぶりに日本で大規模個展を開いている。テーマは「もののけ京都」。村上が挑んだのは、風神雷神図や洛中洛外図屏風など千年の都が生んだ日本美術の最高峰。今回特別に制作現場への密着が許された。アイデアが生まれる瞬間や驚きの制作システムなど半年間に及ぶ取材で捉えた創作の舞台裏を紹介する。また、村上が師と仰ぐ美術史家の辻惟雄が展覧会を鑑賞。現代に至る奇想の系譜を読み解く。
写実なのか、抽象なのか。大正から昭和にかけて活躍した日本画家・福田平八郎(1892-1974)。時に賛否両論を巻き起こしながら、革新的な日本画を描き続けた。膨大な写生を重ねながら自然を徹底的に見つめ、まるで抽象画のような独特の日本画を追求した。没後50年を機に、大阪中之島美術館で開催されている展覧会場から、傑作の数々を紹介。60年以上、倉庫に眠っていた幻の作品から、時代を超える美の秘密を探る。
2024年春にリニューアルオープンした横浜美術館。ここをメイン会場に現代アートの祭典、横浜トリエンナーレが開催されている。8回目となる今回は、アジアを中心に93組ものアーティストが参加。テーマは「野草:いま、ここで生きてる」。世界各地で絶えることのない暴力や抑圧の中、アーティストが生み出したアートに託した「生きる力」とは?新司会の坂本美雨と守本奈実が、井上涼と一緒に会場を巡る。
Photo 前康輔
4月から日曜美術館の司会を務めるミュージシャンの坂本美雨さんと、春を先取りするアートの旅に出かけます。まずは、下町の情緒あふれる東京・谷中へ。ある彫刻家の自宅兼アトリエがそのまま残された空間を体感。箱根の森では、モネやピカソの傑作と対面し、巨匠たちの時代へタイムスリップ。そして、小田原の海を見渡す丘にある壮大なアートスポットで、敬愛するアーティストに出会います。
色彩の魔術師と呼ばれる画家アンリ・マティス(1869-1954)。常に新しい芸術を追い求め、苦闘を続ける中、革新的な表現を生み出す原動力となったのが“旅”。陽射(ざ)しに満ちた南仏、澄み渡る海が広がるタヒチ。それは、フランス北部の小さな町に生まれたマティスにとって、作風を一変させるほどの強烈な体験だった。マティスを魅了した光と色の“絶景”を、圧倒的な映像美で描き、自由あふれる作品世界の秘密に迫る。
京都国立博物館蔵
琳派の祖として知られる本阿弥光悦(1558-1637)。大胆な造形で、漆芸、陶芸などの分野に名品を残し、江戸時代のマルチアーティストとも称される。その美意識の神髄を、光悦自身の手による「書」から読み解く。俵屋宗達が描いた鶴の群れの上にしたためた流麗な和歌の文字。宗達の躍動感あふれる絵と絶妙に響き合う、光悦の筆の魔術とは。さらに、光悦の篤い信仰心に触れながら、革新的な芸術の源泉に迫る。
「私が描いた絵は、もともと肌が持っていた記憶ではないだろうか」。メイクアップアーティスト・小林照子、88歳。化粧品で、モデルの全身に絵を描き、色鮮やかで、幻想的な世界を浮かび上がらせる「からだ化粧」は、彼女が生み出した唯一無二のアートだ。人生最後の「からだ化粧」に挑戦。世界的ダンサーの森山開次とのコラボレーションの現場に、半年にわたって密着した。果たして、どんな作品が生まれるのか。
NHKはトプカプ宮殿のリニューアルに合わせ、特別に取材許可を取得。近年新たに発見された壁画のほか、立ち入りが禁止されてきた区域を映像におさめた。番組では、宮殿の装飾タイルや工芸品の多くに共通したモチーフである植物文様に注目。オスマン帝国の美術に革命をもたらした謎の異邦人や、最近明らかになった日本との交流などについて紹介する。専門家のスタジオトークも交え、オスマン帝国の美に秘められた物語に迫る。
日本を代表する陶工・河井寬次郎。柳宗悦と共に民藝運動を進め、人間国宝も文化勲章も辞退し、自らを“生涯一陶工”として独自の造形を生み出した。自ら設計した自宅は、没後「河井寬次郎記念館」となり半世紀にわたって家族の手で大切に守り伝えられてきた。「暮しが仕事 仕事が暮し」と語った寬次郎。日々の創作を支えた「住める哲学」とは何だったのか?記念館を慈しむ寬次郎の家族の案内で、その秘密に迫る。