熟年期はサバイバル
出版社をリストラされた因藤茂雄(イッセー尾形)は、自分がホームレスになるかもしれないという恐怖と隣り合わせで生きている。工事現場の誘導員をしていたある日、中学時代の親友だった福田(火野正平)に声をかけられる。福田は現場近くの高級住宅街で暮らしているという。卒業以来忘れていた親友との記憶が少しずつよみがえる因藤。しかし、一か月後、虫の息の福田の関係者から山谷へ呼び出される。福田はホームレスだった。
長距離大型トラックの運転手だった下総源一(小林薫)は60歳でリストラされ、今は不定期便のアルバイトをしている。独り身のアパート生活を慰めるのは趣味で始めた読書。ある日、源一は行きつけの古書店で店主(麿赤兒)と親しげに話す客・堀切彩子(安田成美)と知り合い一目ぼれする。惰性のように送っていた生活にがぜんハリが出てくる源一。かつてのプレイボーイぶりを発揮し、頻繁に彩子を誘ってはデートを重ねるのだが。
中米志津子(原田美枝子)は、定年後の再就職に失敗しテレビに向かいひとり言をつぶやくようになった夫(浅野和之)に嫌気がさし、離婚を決意する。55歳にして初めての一人暮らし。夫とは違うタイプの男を求め、結婚相談所に入会して見合いを繰り返す。しかし、思うような相手は見つからず、自信を失って寂しさを募らせていく。夫からは、復縁を迫るメールが届くようになり、志津子は進むべき方向性を見失っていく。
愛犬家の主婦・淑子(風吹ジュン)は、犬嫌いの夫(松尾スズキ)が定年を迎え、一日中家にいることがストレスでたまらない。唯一の逃げ場は、公園で愛犬家仲間の男(世良公則)と語らうこと。ある日、淑子は愛犬の様子がおかしいことに気づく。診断の結果、重い心臓病で余命わずかであることがわかる。だが、夫は相変わらず冷たい態度をとり続ける。淑子は愛犬とともに納戸にこもり、懸命の看病を続けるのだが。夫婦再生の物語。
エリート営業マンとして仕事一筋で生きてきた富裕太郎(リリー・フランキー)は、55歳で早期退職を決意。ひそかに計画していた老後の夢を家族に発表する。それは退職金でキャンピングカーを購入、妻(戸田恵子)と全国を旅するというもの。家族との時間を取り戻したい一心だったが、妻からは猛反対され、娘(市川実日子)からは再就職を促される。仕方なく職探しを始めるが、中高年の再就職の現実は厳しい。人生の再出発の物語。