昭和とは どんな眺めぞ 花遍路
静子(桃井かおり)を訪ねてきた海軍士官・清沢烈彦(三田村邦彦)は、女学校時代の親友の兄で、かつて婚約関係にあった。静子の夫・勝二(河原崎長一郎)は気が気でないが、静子が清沢ではなく勝二と結ばれることになったのは、ジュネーブで開かれた軍縮会議が深い関わりがあったと知らされる。一方、勝二の弟・幸三(森本レオ)と靴屋の女房・おこう(永島暎子)が姿を消す。駆け落ちと知って慌てた静子が転び、流産してしまう。
行く当てもなく戻ってきた女遍路(樹木希林)は、静子(桃井かおり)に預けた我が子・巡子(小きりん)に会おうとしない。静子はなんとか一目だけでも元気な巡子を見ていってほしいと、女遍路を小学校に連れて行く。だが女遍路は遠くからその姿を見つめ涙するも、立ち去ってしまう。残された巡子を育てていく決心をした静子も、このとき妊娠していた。ある日、ひとりの海軍士官(三田村邦彦)が富屋に静子を訪ねてくる。
ウメ(沢村貞子)の孫・英太郎(小倉一郎)は、東京から連れ帰ったミチ(渡辺えり子)という女と結婚したいと切望するが、富屋の家族たちに聞き入れられない。一方、英太郎の父で、ウメの長男の照一(中条静夫)は、なじみの芸者・蝶子(磯野洋子)との間に子ができてしまう。照一は静子(桃井かおり)を説き伏せ、蝶子を静子の家に同居させる。ある日、我が子を富屋に残して姿を消した女遍路(樹木希林)が静子の前に再び現れる。
米国領事館のハリー・ハミルトン(リチャード・キャリー)が、井原院長(小林亜星)の亡き妻の妹・文子(佐藤友美)にプロポーズした。文子に密かに好意を抱く井原は、静子(桃井かおり)とともに文子を訪ね、文子にハミルトンではなく自分と再婚するよう迫るが…。一方、東京の百貨店で勉強をしていた孫の英太郎(小倉一郎)が、若い女・ミチ(渡辺えり子)を連れて帰ってきたことが、ウメ(沢村貞子)は気に入らない。
静子(桃井かおり)が嫁いだ商家・富屋は遍路道に面していた。ある日、店前でひとりのお遍路(樹木希林)が倒れこむ。静子は子連れのそのお遍路さんを井原院長(小林亜星)にみせ、静養のため家に泊めてやる。ところが翌朝、その女は子ども(小きりん)と手紙を残して消えていた。子どもはトラウマのせいか言葉をしゃべることができない様子。静子は名前もわからないその子に「巡子」と名付け、その子を預かることを決めたのだが…
昭和二(1927)年、静子(桃井かおり)はいとこの勝二(河原崎長一郎)との結婚を承諾する。そこへ愛媛の地銀・今治商業銀行が破綻したとのニュースが飛び込む。震災の影響を受けて、銀行の連鎖破綻の波が日本中を襲ったのだ。銀行に資金を預けていた大正座もこの余波を受け、倒産の危機に直面し、升屋(殿山泰司)は大正座を富屋に買収してほしいとウメ(沢村貞子)に頼み込む。歌劇や映画が大好きな静子は買収に賛成するが…
大正十二(1923)年の夏、静子(桃井かおり)は家出をした。叔母のウメ(沢村貞子)を訪れるなり金を貸してほしいと頼み込む。歌手志望の静子は東京の音楽学校に行きたいのだ。なんとかウメから金を借り、船に乗るため港へ向かう静子。だが運悪く、関東大震災が静子の東京行きの夢を阻む。いまさら実家に帰りづらい静子を、叔母のウメはウチに残れと誘う。ウメの息子の勝二(河原崎長一郎)の嫁にうってつけだと考えたのだが…