国枝慎吾さんに聞く! パリパラリンピック アスリートナビゲーター就任

ことし8月に開幕するパリパラリンピック。”NHKパリパラリンピック2024アスリートナビゲーター”に、国枝慎吾さんが就任することが決定しました。パラリンピックに5大会連続で出場しメダル6個(金4・銅2)を獲得したレジェンドが、パリの現地から競技の生の迫力や感動、選手たちの闘いぶりを伝えます。NHKの放送を通じて、応援と共感の輪を全国に届けます。国枝さんにナビゲーター就任にあたっての意気込みや、現地から伝えたいことなどを伺いました。

Q.NHKの「パリパラリンピック アスリートナビゲーター」のオファーを聞いたときの率直なお気持ちを教えてください。

国枝慎吾さん:自分自身もこうした立場でパリのパラリンピックに関われるというのは、引退した時は想像もしていなかったので、すごく嬉しいですね。

 

Q.アスリートナビゲーターという役割を通して、どういったことを視聴者の皆さんに伝えていきたいと考えていますか。

国枝さん:やっぱりここ最近のパラリンピックっていうのはレベルももちろんね、競技性もどのスポーツでも上がっています。おそらく見れば伝わるっていうような状況だと思うので、今回のパリのパラリンピックも視聴者の皆様に本当に見る機会をね、一人でも多くの方々にお届けできたらなというふうな思いで、放送できたらいいなと思っていますね。

 

Q.国枝さんにとって、パラリンピックは大きなモチベーションの1つになっていたのではないかと思いましたが、パラリンピックという大会は国枝さんにとってどのような存在になっていましたか。

国枝さん:本当に今まで5回、アテネから出ていますけども、5回とも人生の転機になりましたね。

アテネパラリンピック

ちょうど4年に一度という、そのタイミングもこう一つの区切りとしても、なんかこう4年って結構重いので。その4年が終わって、じゃあその次の4年をどうするかというふうにまた考えるので、やっぱりパラリンピックを中心にキャリアのタイムマネジメントとか、人生においてのパラリンピックの位置づけとかも含めて考えていたところがあるので。アテネの時はちょうど僕も20歳の時で、就職活動の時期でした。あそこで金メダルを取ってなかったら、おそらくもう20歳で辞めていたと思うんですよね、車いすテニスも。でも、それで金メダルを取ったことで、テニス選手として、これから働きながらやっていくという道ができて。

北京パラリンピック

北京の時には、その働きながらやってたところから、今度はプロ転向をこう見据えた中での北京だったので、ここでももし金メダルを取れていなかったらプロ転向していなかったと思います。そういう意味でも、やっぱりパラリンピックが我々にとっては一番の注目を浴びる場所ですし、自分自身の人生においても、また競技の注目度も高いので、やっぱりこれが毎回転機になっているなっていうふうには思いますね。2016年は、東京でパラリンピックが開催されるって決まって臨んだリオ大会で、ケガにも苦しみながらの年だったですけれども、自分自身もそこで挫折を味わって、本当に競技人生で一番大きな挫折でしたね。そこから這い上がるということも、2020の東京大会があったからこそできたと思うし、その挫折からの復活っていうところも、2020は夢がかなった瞬間でもあるし。

東京パラリンピック

この舞台を目指してっていう8年越しの夢がかなった瞬間でもあったので、これを達成した時はもう燃え尽きたなというふうに思いましたね。本当にそういう意味で、パラリンピックが自分自身の転機になっている。東京がなかったら、あの時コロナで開催されてなかったら、今もたぶん現役だったと思うんですよ僕は。そういう意味でも毎回がこう転機になるほどの重要さというか、選手にとってすごく大きな舞台ということですよね。

 

Q.引退の会見の時に、「モチベーションが上がらないまま続けることは今までやってきたことを裏切ってしまうのではないか」とおっしゃっていましたが、それだけパラリンピックが大きなモチベーションになっていたということですね。

国枝さん:ほんと東京を終えた時に完結したなと思いました。

 

Q.今まで出場したパラリンピックでいちばん印象に残っている大会は、やはり東京ですか?

国枝さん:そうですね、圧倒的に東京ですね。

逆に東京があっからこそ自分自身も、もうパラリンピックは自分でやらなくてもいいかなっていうふうに思ったところもあったので。あとはどう競技人生を終えるかっていうところにシフトしていきましたよね、東京が終わった瞬間から。

 

Q.テニスプレーヤーにとって四大大会もすごく大きな大会だと思いますが、パラリンピックと四大大会とではプレッシャーや達成感も違うものですか?

国枝さん:そうですね。四大大会も、こう近年すごく比重がでかくなっていると思うんですよ。いわゆるオリンピックの選手であったら、テニス選手はきっと四大大会のほうがまだ格上なところもあるんですよ、オリンピックよりも。でも、オリンピックもだいぶ四大大会と同じぐらいの大きさ(になった)ということはオリンピックの選手も言っていますよね。ジョコビッチだとかナダルとかも含めて、そういう意味ではテニスってその辺は他の競技とはちょっと違うところがあって、いわゆるプロフェッショナルなスポーツなので。サッカーとかもねワールドカップのほうがオリンピックよりもでかかったりだということはあるかもしれないですけども、テニスはそういうスポーツだったと。でも、我々はまだまだプロの舞台になっても日が浅いし、やはりパラリンピックのほうが注目度はがぜん強いはずなので、ここを目指す選手が多いと思いますよね。今回もやっぱりある意味、その選手の転機になるっていう瞬間に、多くの方にとってそうなんじゃないかなというふうに思います。 

 

Q.国枝さん自身もオリンピックで金メダル取ったときと、四大大会で優勝したときの達成感は別物でしたか?

国枝さん:別物でしたね。また最後はホームだったというのもあるんですけど、東京大会っていうところは間違いなくあるし。やっぱり四年に一度というのが結構重いんですよ。1ポイントの重みっていうものを試合をやりながらも感じましたね。だから、自分自身の心の整え方も、四年に一度用にやっているところありますね。どうせいつも通りできないので、いつも通り入ろうと思っているとやっぱり慌てちゃうんですよね、きっと。通常通りの自分じゃないことにきっとやっていると自覚するので、もうそもそもいつも通りじゃないと思って、いつも試合入っていました、パラリンピックだけは。いつも通りやりたいんですけど、どうせそこはできないから諦めて、パラリンピック用に自分自身をこう心構えとして持っておくということは、すごく重要だったかなていうふうに今思い返すと思います。

 

Q.初めて出たアテネ大会から、だんだんと回を重ねるごとに自分の気持ちの部分をコントロールというのはうまくできていたという感じですか?

国枝さん:当然、パラリンピックで勝ってきたっていう経験はね、相手選手よりも、東京の時なんか間違いなくあるので、そこは強みではありましたよね。

このパラリンピックを何度も制してきたっていうことが、東京で自分自身を支えたものでもありながらも、それでもこう異常な所で戦ってるっていう感情もあるので、その異常に対して準備するみたいなところもありますよね。

 

Q.パラリンピックに5大会出場したからこそ、パラリンピックの場で戦う楽しさや厳しさを体感してきた国枝さんですが、いざパリの地で戦う選手たちにはどのようなメッセージを届けたいですか。

国枝さん:月並みなことしか言えないですけど、本当に悔いなくね。テニスであれば1ポイント1ポイント、一球一球すべてを出し切るっていうことが大事だと思うし、ほかの競技にとってもベストを尽くせば、僕自身は負けても後悔はなかったので、その場その場、瞬間にベストを出すということですよね。

ロンドンパラリンピック

自分自身のやれるべきことをやるっていうこと。そこに集中するしかないかなっていうふうに思いますね。コントロールできないものに対して、自分でコントロールしようとしても、それはうまくいかないので、コントロールできるもの、準備だとか、それこそメンタルだとか、そういうことに集中して競技に臨んでほしいなっていうふうに思います。

 

Q.パラスポーツの認知度も上がってきていると思いますし、パラリンピックの注目度も高まっていると思いますが、昔と比べても選手たちに対する注目度や期待も大きいですよね?

国枝さん:そう思いますよね。当然選手もそれを感じていると思いますけども、何よりも自分のためにね、プレーしてほしいと思います。周りがどうとかではなくて、自分がどうしたいのかと思って、きっとそもそもそのスポーツを始めていると思うので。その気持ちを大切にして、競技に取り組んでもらえたらなというふうに思いますね。

 

Q.国枝さんの後継者と呼ばれる小田凱人選手が今回初めてパラリンピックに出場することになりますが、どのような活躍を期待されていますか?

小田凱人選手

国枝さん:もちろん金メダルの最有力候補ですし、特に車いすテニス界ですと男子は、小田君か、アルフィーか、その2強なので、2人がどのように勝ち上がっていって最後に激突するかというところが今回の見どころだと思います。先ほど言った通り、ある意味、パラリンピックの異常な舞台でどういったプレーを小田選手がしてくれるのかなってことは、初のパラリンピックですので、その辺は楽しみですよね。

 

Q.小田選手はヒーローになりたいとおっしゃっています。また、小田選手は国枝さんのパラリンピックで活躍される姿を見て車椅子テニスを始めたとおっしゃっていました。今回の大会で小田選手を見て、パラスポーツ始めようと思う子どもたちもきっと出てくるのかなと思いますが。

国枝さん:そうですね、それが今回のパリの舞台になるんじゃないかなと思いますよね。

 

Q.女子の車いすテニスの上地選手もメダルが期待されていますが。

上地結衣選手

国枝さん:上地選手も今30歳になってベテランの域に差しかかってきたというところで、おそらく本人も今までのパラリンピックよりもさらにね、この舞台にかける思いって、年々これは強くなるはずなので、ある意味、本人もラスチャンスっていうふうに思っているところもあると思うので、ここで達成してほしいと思います。僕自身も昨年から上地選手とたまにコートに入ってアドバイスしたりということもしているので、そういった意味でも個人的にも思い入れはすごく強いですね。

 

Q.引退後に車椅子バスケをやられたり、バドミントンをやられたり、ハンドボールをやられたり、いろいろなスポーツに興味を持たれている印象がありますが、パリパラリンピックで楽しみにしている競技や注目している競技はありますか。

国枝さん:やっぱり、バスケは一番注目しているところはありますね。残念ながら男子がね、今回出れないんですけど、女子の車椅子バスケの日本代表には頑張ってもらいたいです、男子の分もね。あとは車椅子バスケを始めてから、世界の選手のSNSをフォローするようになったので、そういった世界レベルのプレーを見ることも今回楽しみですね。

 

Q.現役時代にできなかったスポーツを体験されたことで、それぞれのスポーツの魅力であったり、難しさであったり、新たに発見されたことがあれば教えてください。

国枝さん:あります、あります。バスケだと当然テニスの違いとしては、チーム競技っていうところで、チームでやる楽しさってまた格別なものがあるなというふうに思います。テニスもそうなんですけど、ある意味、初対面でもラリーして終わったら結構打ち解けるんですよ。それがバスケだと、1対1じゃないじゃないですか。たくさんいるわけで、一緒にボールを追いかけて、得点競ってということをやると、試合が終わった瞬間に5対5だったら10人が仲良くなれる。これはなんか素敵だなっていうふうに改めて思ったりもしました。チームスポーツの魅力を感じましたね。だから、なんかバスケのほうが友達多いなって、最近思ってきました(笑)。すぐに友達になれるなと思いました。車いすバスケを始めてから、一気に友達も増えましたからね。

 

Q.現在アメリカでジュニアのコーチングをされたり、トーナメントディレクターで裏方をされたり、次世代選手の育成などの活動をされている国枝さんですが、以前番組の中で「目標を持つことが目標」とおっしゃっていましたが、新たな目標や夢は見つかりましたか?

国枝さん:いやあ、今も追っているところですね。何を自分の中でこれからやっていこうかなと、日々模索しているところではありますけれども、アメリカで今はコートに入って、アメリカのジュニアの選手とやっていると、アメリカってまだまだ車いすテニスのトップレベルがそれほど突き抜けていないんです。そういったジュニアの子がこれから大学生になって、いわゆるアメリカの大学はスカラシップだとかすごい進んでいるので、そこは取れて、じゃあその後、どういった活動をしていくかっていうのが、ジュニアの子がなかなかビジョンとしてないんですよね。それはやっぱりアメリカで車いすテニスが、まだビジネスとして産業として成り立っていないからで。大学生までやって、そこで終わろうかみたいなふうに見えるっていうところがあって。それはもちろん道だと思うし、でもその先にも道があるんだよというところを、自分自身が伝えることができたらなとか思いながら活動しているので。アメリカで車いすテニスをある意味ビジネスとしてやれるっていうところまで、彼らを育てることでそういった発展をしていくことを望んでいますし、それを僕自身も彼らと関わることで楽しみにしているところがありますね。それだけのポテンシャルがある子が結構いるので、この子たちがトップになれば、それこそアメリカンドリームを掴めるんじゃないかなっていうふうには思っているところなので、それが今、僕の一番目標というか、近いですね。

 

Q.いつかパラリンピックにコーチとして参加されている国枝さんの姿を見てみたいというふうに思ってしまうのですが。

国枝さん:ありがとうございます。まあ、オファーがあればですけどね、可能性もありますね。それぐらいコーチングはやりがいありますね。自分自身も、自分の練習メニューとか、ある程度自分で方法を考えてやってきたところもあるので、それをこう照らし合わせながら、この子にどういった練習がいいのかな?なんていうふうに、本当に四六時中考えるようになってきたので。なんか自分が現役の時に、それこそお風呂入っていてもトイレしていても、常にテニスのことを考えていたんですよ。なんかそれと同じように、この子に何がいいかな?なんていうふうにお風呂入っている時に考えていると、「あっ、これはなんか現役の時に自分がやっていたことと同じような思考になってるな」なんていうふうに、よく最近は思い出したりもしますね。

 

Q.そういう感覚が自分にとっても居心地がいいというか、そんな感じもありますか?

国枝さん:自分自身もこれが一番の得意分野でもあるので。ある意味、テニスに対して頭を使って、じゃあ次の手は何を使ってというところは一番得意としてきた部分なので、それを生かせる気がしますね。ただ、難しさも同時に感じていて、こうやってコーチングすることも、人生にとっては初めてですし、現役中は誰にも教えてなかったので、それ(自分の練習方法)を他の選手に当てはめれば、じゃあそのままできるのかどうかっていうところもクエスチョンですし。やっぱり選手それぞれ身体的なところも違いもあるし、能力の違いもあるので、全部自分のことを押し付けるのは難しいですし、その兼ね合いも含めて、勉強しながらやっています。しかも、それを英語でやんなきゃいけないという、さらに高いハードルにチャレンジしているところですね。でも、やっぱりチャレンジすることは楽しいので、日々楽しいです。


Q.国枝さんのご経験と重ねると、アメリカで車いすテニスを発展させるということは、アメリカからパラリンピックの金メダリストを出したいということを思っているのですか?

国枝さん:そうですね。やっぱり、四大大会の1つである全米オープンがあるんですけど、全米オープンはすごいお客さんの入りが悪いんですよ。特に車いすテニスが。もちろん他の健常者のテニスの試合はお客さんは埋まっていますけど、車いすにはやっぱり注目度がないっていうのはすごく感じたところがあって。やっぱり自国の選手が強くないとまず盛り上がらないですよね、最初のステップとして。そもそもやっぱり見に行こうと思わないのは、アメリカの車いすテニスの選手が弱いからというところもあるので。そこは僕の中では、ずっと現役のときからか思っていたところで、アメリカがもうちょっと強かったら盛り上がるのにななんて思っていたので。今は、どうしても日本対ヨーロッパみたいな構図なので、これをアメリカというところが出てくると、より世界的に楽しくなってくるんじゃないかと思いますね。

 

Q.車いすテニスを日本という国だけではなくて、ワールドワイドで見て世界を盛り上げようというお考えなんですね。

国枝さん:そうですね。日本はもう強いから。小田君もいるし、上地さんもいるし、強いから逆にあまりやることはないっていうか。それこそ産業としても発展してるし、みんなちゃんとお金も稼いでるし、というところで、それだったら他の国のほうが僕がやることがあるかなっていうふうに思っているところですね。

 

Q.日本が強くて、産業として発展してきたのは、国枝さんの活躍や努力による功績が大きいと思いますが。

国枝さん:多少はもちろんあると思うんですけど、それを今度は他の国でやってみたいというところですね。そのほうがワクワクするかなっていうふうに思ったというところですかね。

 

Q.いろいろなチャレンジを続けている国枝さんですが、アスリートナビゲーターも新たなチャレンジの1つだと思いますので、ぜひ届ける立場としても才能を開花してほしいなと思いますが。

国枝さん:そうですね、これもまた初体験ですので、自分自身どうなるかわからないですし、放送をする中で、自分自身も成長できたらなっていうふうに思っています。頑張ります。

 

Q.初めてパラリンピックを見る方も多くいらっしゃると思いますが、どんなふうに楽しんでもらいたいなと思っていますか。

国枝さん:やっぱり選手のファンになってほしいですね。 ファンを増やすことが、パラリンピックの継続的な盛り上がりにつながると思うので。僕自身もバスケの理事もやっていますけども、車いすバスケの日本選手権にはすごくたくさんお客さんが入っていたので、それは僕は衝撃的でしたね。

パリパラリンピックを決めた車いすバスケ女子代表

やっぱり、それは東京でのあの銀メダルという結果があったからこそだと思うし、それで選手にファンがついてっていう連鎖だと思うので、それを今回のパリでも一人でも多くの方に、一人でも多くの選手のファンになってもらうっていうことが一番大事なことかなと思います。

 

Q.パラリンピックを見てスポーツを始めようと思う子どもたちもいると思いますが、パリ大会はどのような大会になってほしいと思っていますか。

国枝さん:どのスポーツでもいいので、スポーツの良さというものがいちばん最高峰の舞台から伝わるっていうことは、子どもたちの夢にもなると思うし、その夢を持つことでやっぱりその子の練習にもクオリティが上がってきて、そこからまた新しいパラリンピックの選手が生まれたりという連鎖になってくると思うので、この大会に注目してもらいたいです。また、その選手がそういった子どもたちに自分のすごさっていうものを見せつけてほしいなと思います。

 

Q.国枝さんがパラリンピックに出る前は、いち観客として見ていたかと思いますが。

国枝さん:いや僕の時代はテレビでやっていなかったですからね。今とは全く違いますね。僕が車いすテニスを始めた時に、車いすテニスって何かわからないで始めていますし、今だったらある程度、僕の映像があったりするので。今の時代はみんな何かしらゲットできるじゃないですか情報が。それは、すごい今の子たちは恵まれているなというふうに思うし、こうしてパラリンピックが継続してNHKでも放送してもらえることで、それがより伝わっているという認識は僕も持っています。だから、印象に残っているパラリンピックというのは自分が出たことしか知らなくて。シドニーもほとんど見たことないんですよね。

 

Q.今回初めてパラリンピックを見るという方におすすめの競技はありますか?

国枝さん:もちろんね、テニスは当然注目してもらいたいですし、僕自身は球技が好きなので、バスケだとか、それこそラグビーだとか。そういった競技のほうが僕はいつも見ちゃいますけどね。でも、陸上もこの間見に行っても、いかに自分自身の障害と器具を使いこなしていくという、そのどう使っているのかな?というところは見ていてすごくて面白かったです。その選手の鍛え抜かれた体を見ているだけでも、伝わるものはあると思うので、その辺も含めて注目してもらいたいなと思います。盲目の人だと一緒にこうペアで走って、そのリズムというものも完全にシンクロさせないと難しいっていうところもあって、本当にそれが完全に一緒だったんですよね。走るタイミングや足の動きが。それはすごく美しいなと思って見ていました。本当にこう積み上げてきたものをあの場で発揮するということのすごさですよね。

 

Q.国枝さんご自身も選手時代とは違う感覚でスポーツを楽しんでいる感覚はありますか?

国枝さん:そうですね。自分自身もプレッシャーも当然なくなったので、いろんなスポーツに昨年はトライしましたし、現役中はケガのリスクがあるので、なかなか他のスポーツをやれなかったんですけど、やってみるとそのスポーツの難しさというものも同時に体感できますよね。

 

Q.パリの地の思い出などはありますか。

国枝さん:パリはやはり全仏オープンのローランギャロスがあるので、そこで何度も戦いましたし、やっぱり一番はパリのお客さんは熱いですね。

全仏オープンにて

他の国よりもおそらく熱い。盛り上がってくれますね、とにかく。いいプレーに対しての反応というものが、ものすごく盛り上がってくれるんで、やっている選手のほうも乗ってくる。そういう意味では、全仏が一番好きでした。アウェーでも気持ちいいもんですね。アウェーでも、もうフランス選手への応援がものすごいので押し潰されるそうになりますけど、それと戦うのも面白かったですね。パリの街を歩いていても、結構声をかけられますしね。タクシーに乗っていても運転手さんに言われたりします、そういう意味でも熱いですね。テニスは特に全仏オープンがあるので、またちょっと違うかもしれないですけど、あの期間はテニス一色に町もなりますし。それが今回はオリンピック・パラリンピックになって、僕もテニス以外で行くのは初めてなので、オリンピック・パラリンピックの時にどんな街になっているのかというところも含めて楽しみです。そして、その楽しさをぜひテレビを通してお届けできたらと思っています。

 

Q.最後にパラリンピックをご覧になる視聴者の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。

国枝さん:パリのこの熱さ、熱狂するパリということを皆さんにお伝えしたいと思いますし、僕自身も選手の経験を交えてお伝えできたらなというふうに思っています。