ピッチクロックって何? 大リーグのルール変更詳細

(※2023年3月23日スポーツオンライン掲載)

2023年シーズンから大リーグで実施されている投球間の制限時間や極端な守備シフトの禁止などの大幅なルール変更。去年と比べて試合時間は短縮される一方で、ピッチャーがボールを投げる前に、”ストライク”や”ボール”が宣告され戸惑う場面も。大リーグのシーズンが開幕して、一気に注目が増してきたルール変更をここでおさらいしてみませんか?(※2024年シーズンで一部ルール変更があり加筆・修正しています)


大谷翔平選手 初勝利の裏で2つのピッチクロック違反


アメリカ時間の4月5日、シアトルで行われた「エンジェルス 対 マリナーズ」戦。この試合に投打の二刀流で出場した大谷翔平選手は6回1失点の好投で今シーズンの初勝利をあげました。その一方で、話題となったのが大谷選手が投打の両方でピッチクロック違反をした最初の選手になったことです。

初めてピッチクロック違反をとられた大谷選手

大谷選手が思わずこのような表情を見せてしまったのは、立ち上がりの1回。制限時間内に投球動作に入れず、ピッチクロック違反として”ボール”を宣告された場面です。その後、バッターとして6回の打席で制限時間以内に投球に備えることができず、こんどは”ストライク”の宣告。これもピッチクロック違反でした。

下の写真の時計がピッチクロックの表示です(開幕戦のアスレティックス戦)。

現地3月30日開幕戦 (オークランドにて)

もちろん二刀流は大谷選手しかいないので当然と言えばそれまでですが、改めて新しいルールが注目されました。それでは大リーグのルール変更を詳しく見ていきましょう。


さあ知ろう”ピッチクロック” 投手編


実はこのルール変更は去年9月に大リーグ機構が発表したものです。でも実際に見てみないとよくわからないことは多いですよね。
まずは投球間に設けられた制限時間のルール「ピッチクロック」を、ちゃんと学びましょう。

<ピッチャーのカギとなる2つの数字、18秒※と15秒>

※2024シーズンから「20秒」→「18秒」に

この18秒15秒は、ともにピッチャーがボールを受け取ってから投球動作を開始するまでの制限時間です。

では3秒の違いは何なのか?答えはランナーがいるかどうかです。

<ランナーなしの場合 = 15秒>

ランナーがいない場合は、ピッチャーはキャッチャーからボールを受け取ってから15秒以内に投球動作を始めないと“ボール”が宣告されます。

<ランナーありの場合 = 18秒※>

※2023年は「20秒」 2024年から「18秒」に短縮

ランナーがいる場合は、もちろん盗塁などへの警戒が必要で神経を使いますよね。その分3秒加算されて18秒、ただその制限を超えると、こちらも“ボール”が宣告されます。 (※2024年ルール変更を反映)

<バッター間は30秒というルールも>

ちなみに打者と打者の間は30秒と定められています。30秒以内に投球動作を開始しないと、いきなりワンボールです。


”ピッチクロック” 打者編


では、バッター側のペナルティーはないのかと疑問に思われると思いますが、答えは「あります」

その数字が8秒です。

例えば、ピッチャーは15秒以内に投げたいのにバッターがなかなか構えなければ投球動作に入れません。そこで、バッターは制限時間が残り8秒の時点でピッチャーに注意を向けていなければなりません。なかには、バットを揺らしながら投球を待つ選手もいますから、「構える」ではなく「注意を向ける」というわけです。

<バッター = 制限時間8秒前までに注意を向ける>

仮に、バッターが制限時間の8秒前になってもピッチャーに注意を向けていなければ、“ストライク”が宣告されます。それが、2月25日のオープン戦の幕切れとなった“ストライク”なんです。さらに、打席中にとることができるタイムは1回のみに制限されます。


けん制の制限も...


もうひとつ重要なのがピッチャーのけん制(プレートを外す回数)の制限です。

<けん制は3回失敗すれば“ボーク”>

これまでは無制限に許されていましたが、今シーズンからは1打席の間に3回目のけん制が失敗した場合は“ボーク”が宣告されてランナーは次の塁に進むことができます。もちろんけん制のふりでプレートを外した場合も1回です。俊足のランナーを背負ったピッチャーにとって、相当酷なルール変更といえるでしょう。


守備シフトにもメスが


ここからは「ピッチクロック」とは離れますが、大リーグが今シーズンから導入する大事なルールの変更です。まずは、極端な守備シフトの禁止です。

去年までは、例えば大谷翔平選手のような強打の左バッターを迎えた場合、一二塁間に3人の内野手が並ぶなど、どのポジションの内野手が、どこにいるのかわからない極端なシフトが度々見られましたよね。データを重視する大リーグらしい戦略として受け入れられてきましたが、大リーグ機構はここ数年バッターの打率が落ちてきていることを踏まえ、今シーズンから極端な守備シフトの禁止を定めたのです。
大リーグの公式ホームページで公開されているルールを箇条書きにしました。

このルールには但し書きがあって「特定の状況で外野手を内野または浅い外野の芝生に配置することを妨げるものではない。しかし、外野手を4人配置することは禁止とする」という文言がついています。

これらをまとめて少しわかりやすくご説明します。まず…

<内野手はセカンドベースの両側に2人ずつ配置>

さらに…

<内野手として出場する選手は投球の際内野にいること>

これで一二塁間を内野手3人で守る極端な守備シフトはできなくなりましたが、外野手を内野に置くことは禁止していません。 
外野を守る選手を2人にして内野を5人で守る(ただし、セカンドベースの左右には最低2人が必要)ことは可能です。こんな手を打ってくる監督がいるかもしれません。

このルールに反した場合、攻撃側はその一球を“ボール”とするか、プレーで発生した結果(例えばヒットなど)のどちらかを選択することができます。


ベースの大きさの変更は何をもたらす...


最後にベースの大きさも変わります。従来の15インチ四方のベースが18インチ四方に変更されます。
センチメートルで表記するとおよそ7.6センチ大きくなりますので、塁間はベース2つ分にあたるおよそ11.4センチ短くなります。

大リーグ機構は選手のけがの防止につながるとしていますし、盗塁の増加も期待できそうです。

さあ、新しいルールをよーく理解した上で、2023年の大リーグを楽しみましょう!